名古屋大学教育学部附属中・高等学校は、創設以来、生徒の個性・自由・自主・自立を重んじ、各教科の基盤の上で横断的・総合的な学びを大切にしてきました。こうした伝統の上で、時代を先取りする教育実践に取り組み、教育界をリードしてきました。
1995(平成7)年には、研究開発学校として「総合人間科」を開始しました。その成果は、1998~99(平成10~11年)の学習指導要領における「総合的な学習の時間」の新設につながっています。当時は、21世紀を目前に産業社会から情報社会(知識基盤社会)への移行が進み、知識を所有することよりも知識を生成し活用することが重視され、自ら考える力を育成することが学校教育の課題とされていました。生徒の個性的な探究を大切にする本校だからこそ、21世紀のモデルとなる教育実践を生み出すことができました。
その後も、2006(平成18)年にはスーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)、2010(平成22)年にはユネスコスクール、2015(平成27)年にはスーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)、2021(令和3)年にはワールド・ワイド・ラーニング(WWL)の指定を受け、先導的な教育実践に取り組んできました。こうした取り組みによって、協同的探究学習の展開、STEAM教育の充実、イノベーティブなグローバル人材の育成などの成果を生んできました。
現在、第4次産業革命によるSociety5.0へと社会が変化する中で、ビッグデータやAIによって、人間の処理能力をはるかに超えた判断が可能になる時代が近づいてきています。技術の進歩は人間に恩恵をもたらすとともに、新たな課題を突きつけます。人間には、AIによる判断が望ましいのかという、より高次な判断が求められます。人間としての倫理と教養に基づいて、多様な他者と協同しながら、人間・社会・自然を深く洞察し、複雑な問題に対して意思決定をしていかねばなりません。教育を通じた人間形成の役割が、ますます高まっています。
本校は、今後も人間形成に寄与する学校教育のあるべき姿を追求し続け、こうした時代の要請に応えていきます。本校には、個性と自由を大切にする校風の他にも、いくつもの強みがあります。名古屋大学東山キャンパス内に位置し、大学と連携した教育の機会が充実しています。人間の発達と教育を研究する教育学部の研究を活かした実践を展開しています。海外の幾つもの教育機関とも連携しています。
このような強みを活かし、これからも一人ひとりの生徒が個性を磨き、さまざまなことに挑戦できる学校を目指します。また、生徒が思う存分に試行錯誤するためには、安心して学び合える風土と、人間的なゆとりが不可欠です。教職員が一丸となって、魅力ある教育実践を展開し、生徒の挑戦をあたたかく見守って支えていきます。みなさまのご理解とご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。
名古屋大学教育学部附属中・高等学校長 柴田 好章
名古屋大学教育学部の教育研究計画に従って、「勇気ある知識人を中等教育段階から育成する」ことを目的とし、中高一貫教育により、心豊かにして主体性のある人間形成を企図しています。このような立場から、本校では情緒豊かにして、総合的に物事を把握し、創造的に活動し得る態度と能力を養うことに努めています。このような理念を理解し、探究心のある意欲的な生徒を求めています。
各教科等で学びを充実させるとともに、本校独自のカリキュラムを通して探究力を育成します。加えて名古屋大学と同じキャンパス内にあるという恵まれた教育環境のもと、大学との連携教育、中高の交流教育、少人数教育等を実施することで将来を見据えた自己のキャリアを形成します。
卒業時には、ものごとの本質を理解したうえで、科学的に思考・吟味し活用をする力や、多様な価値観を持つ他者と協同できる力を備え、変化に即応しながら生涯にわたって探究し続けることができる生徒となることを目指しています。
【名古屋大学教育学部附属中・高等学校校歌】
作詞 土岐善麿 作曲 平井康三郎
東海かがやく 空のもとに歴史を興せる 意気を継ぎて友情ひとしく 若きちからをあつめて起つや ひろくゆたかにともに未来を 語るところよろこび常に 新たなれ
希望のみどり 平野にあふれ学べり知れり 四方の道につづく山河 雲高し自由の海よ 港のかなた潮の香めぐる 世界の岸に風は 平和の 朝を呼ぶ
いざなごやかに その名を負いてこぞり 競い 進むべし